yukokumai.com

an unofficial site since 2000

管理人コラム

くま井ゆう子の歌詞

ライ麦畑でつかまえて

くま井ゆう子さんの詞の世界は、1990年代の学生らしさが溢れているように思えます。
 
あの頃、大学生になったら免許を取ってクルマを持つ人が少なくなく、くま井さん自身もCBSソニー賞の賞金で愛車「パジェ朗」(三菱パジェロ)を購入したそうです。
それもあってか

「クルマの免許取れたら」(『せつないよね』)

「第三京浜80キロも出してしまう」(『とばしぐせ』)

といった、若い人が当たり前にクルマに関わる場面が出てきます。
 
若者のクルマ離れが叫ばれて久しい当今からは考えられない光景かもしれません。
反対に、当時は通信手段と呼べるものがイエデンしかなく、LINEやショートメールはおろか携帯電話自体が個人レベルには普及していない時代。

「留守番電話だったから迷わずメッセージを入れとくよ」(『電話なんかなくても』)

というのも世相を感じます。
ちなみに、文字でのコミュニケーションはもっぱらファクス(!)で、プロデューサの大村雅朗さんが煮詰まってスタジオから帰宅してしまった時に、くま井さんがクマのイラスト入りの抗議のファクスを送ったという話をご本人が語っておられます。
 
また、くま井さんは本を読む人だったのだろうなという印象を管理人は受けています。
 
転校する同級生の行先を

「急行の線路を指でなぞった」(『パーティー』)

とあるのは、JRの急行列車が全廃された今となっては懐かしい描写ですし、そもそも1990年代初頭の時点で急行列車の数はかなり減っていました。特段鉄道ファンであるとも思えないくま井さんから、急行という列車種別が歌詞に浮かんでくるのは語彙の厚みを感じる思いがします。
 

「読みかけのサリンジャー」(『まばたき』)

というのはおそらく『ライ麦畑でつかまえて』を指すものと思うのですが、この曲が世に出た時点で21歳だった若者からこの作品がさらっと出てくるのはよほどの読書家ではないでしょうか。
曲はすべて詞先だったそうですし、日記をつけていたとのご本人の発言もあり、文字のインプット/アウトプットが豊富だったからこその詞の世界の幅の広さや奥行きが得られたのだろうという気がしてなりません。